
家づくりに欠かせない基礎。
住宅工事で最初に施行される部位で木造住宅では唯一鉄筋コンクリート造りの部位でもあります。
そんな基礎ですが、みなさんはどれくらい知識を持っているでしょうか?
実は基礎には2つ、種類があります。
布基礎とべた基礎です。
それぞれにはメリットとデメリットがあり、使い分けをしないと大損をしているケースもあります。
今回はそんな布基礎とべた基礎のメリットとデメリットをご紹介します。
布基礎とべた基礎のそれぞれのメリット・デメリット
べた基礎

べた基礎は最近の住宅業界では最も多く使われている基礎になります。
家が建つ範囲すべてをコンクリートで覆う施工方法です。
簡単に言うと、家の下を「一枚の大きなコンクリートの板」で支える方法です。
メリット
・耐震性が確保しやすい
比較的誰が設計しても耐震性が確保しやすいのがこの基礎のメリットです。
設計に不慣れな人でも取りやすいので、多くの企業がこの基礎を採用している理由です
・湿気・シロアリ対策になる
床下の湿気の多くは床下の土から上がってきます。床下をコンクリートで覆ってるので湿気の侵入を防止することができます。
シロアリも同様でシロアリは基本的に土を通ってくるので土をコンクリートで覆うことでシロアリの侵入を防止できます。
デメリット
・コストが高い
べた基礎の唯一と言っていいデメリットが、コストの高さです。
べた基礎は家が建つ範囲すべてをコンクリートで施工することで、耐震性を保っています。
その分鉄筋とコンクリートを使う量はハンパではありません。
多くの材料を使う分、材料費が嵩み基礎の中では一番コストが高くなってしまう傾向にあります。
・寒冷地には使いづらい
鹿児島県などの温暖な地域では関係はありませんが、寒冷地で家を建てる方はべた基礎は向かない可能性があります。
寒冷地では基礎を地面が凍る層より深い位置で作らないといけないのですが、べた基礎はあまり深く作るのには適していない基礎と言えます。
そういう意味では寒冷地には使いづらいというデメリットがあります。
布基礎

べた基礎は壁の下だけに基礎を作りる工法で、断面が逆T字型になっているのが特徴です。
メリット
・コストを抑えることができる
布基礎は壁の下にだけ基礎を作る方法なので、べた基礎の家の範囲全体に基礎を作る方法と比べ使う材料がとても少なくコストを抑えることができます。
コストは材料費はもちろんですが、材料が少ないので運送費や人件費を抑えることができます。
最近の住宅価格の上昇の多くは材料費と人件費が占めています。
特にコンクリートは価格の上昇の上げ幅が大きいのでコストダウンにつながりやすいです。
デメリット
・耐震性が確保しにくい
布基礎はべた基礎に比べて耐震性が確保しづらいことはデメリットの一つと言われています。
よくべた基礎に比べて耐震性が無いと言われますが、しっかりとした設計をおこなえば、べた基礎に劣るということはありません。
あくまでも耐震性が確保するにはそれなりの知識と設計力が必要ということです。
・地盤を選ぶ
べた基礎は基礎の床全体で家を支える関係上、少し地盤が弱め(地盤改良が不要な程度)の土地でも施工しやすいですが、布基礎は部分的に家を支えているのでべた基礎では地盤改良無しでいけた土地でも布基礎だと地盤改良が必要になる場合がありま す。
面の広い物よりも先端のとがった物の方が刺さりやすいですよね。
それと同じ原理が基礎にも働きます。
・シロアリや湿気に弱い
布基礎は部分的にしか基礎を作らない為、床下は地面が露出することになります。
そのため、土を通してシロアリや湿気が侵入しやすくなってしまっています。
しかし、最近では防湿シートを張って湿気を防いだり、べた基礎よりも少ないコンクリートを施工して土が露出しないようにして湿気やシロアリの侵入を防ぐ施工をされることが一般的なのでデメリットとしては薄くなってきました。
どちらを採用した方がいいのか?
どちらの基礎を採用するしないにはまず地盤の強さが肝心になってきます。
地盤が弱い基礎の場合は面全体で支えるべた基礎の方が耐震的に有利に働くことになります。
仮に地盤改良が必要になっても家全体を支える力が分散しているので、地盤改良費を抑えれる可能性もあります。
逆に地盤が強い場合は、布基礎がコスト的にもいいでしょう。
なぜべた基礎が多いのか?
べた基礎が採用が多いのは設計のしやすさと基礎と地盤の強度に関係があります。
標準が布基礎の場合で、地盤が少し弱い土地があったとします。
通常家の設計が先に進み、地盤調査をおこなって地盤調査をして地盤の強度が分かるのは設計完了間際になることがほとんどです。
それまでは、地盤改良の出ない土地前提で設計を進めていきます。
ある程度、設計をしたところで地盤調査を実施して、結果「少し地盤の弱い土地」であることが発覚します。
この「少し地盤の弱い土地」はべた基礎であれば地盤改良の必要はありませんが、布基礎の場合は地盤改良の必要があります。
こうなると費用次第ではありますが、
費用は布基礎+地盤改良よりべた基礎+地盤改良無しの方が安くなることが多くなるので、結果的に布基礎からべた基礎へ設計変更をする必要性が出てきます。
設計変更は、いちから設計をするより時間も労力もかかるので設計者はあまりしたくない作業になります。
そういう観点から地盤がどっちに転んでも設計変更の必要のないべた基礎が主流になっていきました。
べた基礎の方が、耐震性に有利というのはおそらくこのあたりの地盤をあまり選ばないところやコンクリートでがっちり作っている印象で布基礎よりもしっかりしていそうという印象で語られているんだと思います。
結論:どちらがいいかは地盤次第
基礎は布基礎がいいのかべた基礎がいいのかは、地盤次第ということになります。
地盤が強ければコストが安い布基礎、地盤が弱い場合はべた基礎という感じで選んでもらってもいいと思います。
しかし、ハウスメーカーや工務店で家づくりをする方は会社推奨の基礎が決まっていて変更不可の可能性もあるので基礎も含めてコストを考えて家づくりをするなら設計事務所がおススメです。
仮にハウスメーカーや工務店で基礎変更を承諾してもらったとしてもコストダウンにつながらなかったり、普段取り扱っていない施工で施工ミスが出る可能性もあるので注意が必要です。
最後に
では、有村建築設計工房ではどちらで設計していますか?
というと今のところ断熱の関係からべた基礎で設計することが多いです。
基礎を含めて断熱することで、断熱性能を高めることができるからです。
しかしご要望に応じて、布基礎での設計も可能です。
どちらにしても当事務所では姶良市や霧島市、鹿児島県でも珍しい全棟許容応力度計算による構造設計をおこなっていますので、どのような施工方法でも安心してご相談ください!