吹抜けに火打ち梁が!?基準法改正後の設計の落とし穴

建築基準法が改正され、最近ある空間設計が話題に上がっています。

それが、吹抜けの火打ちです。

打合せでは吹抜けに火打ちが入っていなかったはずなのに、いつの間にか火打ちが吹抜けに入っていて聞くと法令上入れないといけないと言われているみたいです。
2階建ての建物は現在、構造の審査を構造仕様規定か構造計算にて審査されるようになっています。

構造仕様規定に火打ちの設置が記載されているので、設置は義務付けられています。
しかし、どれだけ入れないといけないかはどこにも記載がありません。

できることなら火打ちを吹抜けに入れたくないですよね?

建築基準法の火打ち

火打ちは法令的には建築基準法施行令46条第3項に出てきます。

【床組及び小屋ばり組には木板その他これに類するものを国土交通大臣が定める基準に従つて打ち付け、小屋組には振れ止めを設けなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。】

これは、地震や台風などの強風などの横から建物を押す力に対して、建物がその形状を保つように補強をしましょうという法律です。

ダンボール箱で想像してみてください。

上のフタと下のフタを開けた状態でダンボールを横から押すとぐにゃぐにゃ動いてしまいますが、フタを上下共閉めるとぐにゃぐにゃせずに四角い箱として形を保つようになります。
このフタの役目になる材料を使いなさいというのがこの法律です。

ちなみに今の住宅は24mmの厚さの合板を床に貼っているので、しっかりとフタがされるようになっています。
しかし、どうしても吹抜けと屋根がかかる場所は合板でフタをすることができないので、火打ち梁という材料が出てくるわけです。

また、火打ちは隅角部に入れるようにとも規定がされています。
隅角部とは箱の角のところです。

吹抜けから火打ちはなくせるのか?

火打ちが何者で、なぜ入れないといけないのかは分かっていただけたと思います。
さて、肝心の吹抜けに出したくないから無しにできるのか?問題の答えは

家を建てる地域の建築主事次第!!

ということになります。

これは建築基準法の建付けがとても悪い為、こういうことが起きてしまうんです。
要はとてもグレーな法律だということです。

実は、建築基準法以外にも火打ちのことを書いているものがあります。
それが、品確法とフラット35の仕様書です。

それぞれに、火打ちについてもう少し細かく記載があり、そこには一定の面積ごとに必ず火打ちが必要なように読むことができます。
なので建築主事がその資料を参考に判断した場合、吹抜けにも火打ちが必要になります。
これを参考にするしないは主事の判断なので、参考にした人は火打ちは必要だし、参考にしない人は不要ということになります。

この辺は建築士も頭を悩ませる部分なので、統一してほしい!!

今まではなんで無くせてたのか?

それでも今までは特に問題なく吹抜けから火打ちを無くせてたのでしょう?

それは、建築士の判断に委ねられていたからです。

現在2階建ての建物は建築基準法によって2号建築物と定められています。
2号建築物は、建物に係るすべての法律の審査の対象になっています。

一方で、2025年の3月までは2階建ての住宅は4号建築物と呼ばれていました。
これは、建築士資格の持っている人が設計した建物は、当然法律をの条件を満たしているだろうから一部の審査を省略してもいいよという法律でした。
その中に、今回の火打ちの規定が入っていたのです。

設置する場所や本数なども基準法には記載が無い為、そこは建築士の判断で足りれば抜く、足りなければ入れてもらうの判断を建築士がしていたからです。

現状、審査が入っているので、主事次第というところが大きな部分になるかと思います。

その火打ち無くして本当に大丈夫ですか?

前にも説明しましたが、火打ちはダンボールのフタの役目をしている材料です。
フタが無ければダンボールのようにあっという間につぶれてしまいます。

そのフタに関して、ほかのフタがあるから部分的に穴が開いてても大丈夫かどうか判断しながら吹抜けの火打ちが無くてもいいかどうか判断しています。
しかし、本当にその判断は正しいのでしょうか?

要は、建築士の勘に頼って判断をしているということです。
水平方向の力に弱い家は、日本ではあっという間に倒壊してしまいます。
そんな重要な梁を勘で抜くのはとても恐ろしいことだと思います。

なので、構造計算をしっかりとおこなってもらいましょう!

現在、建物が本当に設計通りの耐震性が取れているのか判断できるのは構造計算だけになります。

構造計算をすることで、どこに火打ちが必要なのか、どこは無くても大丈夫なのかの判断ができますし、いくら主事が吹抜けに火打ちの設置を求めてきても、構造計算で吹抜けに火打ちが無くても耐震性がしっかり確保できていることが分かれば、主事もそこまで求めてくことはありません。

構造計算をすると自由な設計ができないと思われがちですが、構造計算をするこそ自由で安全な設計ができると僕は考えています。
勘に頼る設計ではなく、根拠を持った設計をして、安全に理想の空間づくりをしていきましょう!

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