
「今の暮らしにぴったりな家をつくりたい。」
家づくりのご相談を受けていると、多くの方が今の家族構成、特に「子育て中心の暮らし」をイメージして間取りを考えています。
それ自体はとても自然なこと。家づくりは、家族みんなの暮らしをより良くしたいという思いから始まります。
でも、ひとつ忘れてはいけないのが、家族の形は変わっていくということ。
子どもはやがて成長し、巣立っていきます。すると家の中の使い方も大きく変わっていきます。
今回は、子どもが巣立った後も快適に暮らせる家づくりの考え方や設計の工夫について、僕の設計者としての視点からご紹介します。
家は一生をともにする場所。だからこそ、今も、将来も心地よく暮らせる家づくりを目指していきましょう。
子どもが巣立った後に起きがちな家の悩み
子育てを終えたご夫婦から「もっとこうしておけばよかった」という声を聞くことは少なくありません。
いざ子どもが独立してみると、それまで気にならなかった家の使い勝手の悪さや負担感が見えてくるのです。
部屋が余って持て余す
「子ども部屋が空き部屋になったものの、使い道がない」という話はとてもよくあります。
せっかくのスペースなのに使い方が決まらず、物置化してしまうのはよくある失敗です。
掃除や管理が大変になる
広い家は子育て中は便利でも、夫婦2人になったときには掃除や管理の負担が大きくなりがちです。
誰も使っていない部屋まで掃除をしなければならない、というのは精神的にも負担になります。
空間の使い方が変わるが柔軟に対応できない
「子どもが巣立ったから生活スタイルが変わった」のに、家の間取りがそれに追いついていない。
例えば、家族で集まるスペースはもうそんなに広くなくてもいいのに、リビングだけが無駄に広い、などのアンバランスが起きます。
光や風通しが悪くなる配置になっている
家族全員で暮らしていたときは気にならなかった光や風通しの問題も、使わない部屋が増えると急に気になるもの。
閉めきった部屋が多くなると、家全体の通気性や快適性に影響が出ることがあります。
子どもが巣立っても快適な家にする設計の工夫
こうした問題を防ぐには、家を設計する段階で「将来」を視野に入れておくことが大切です。
子育て中の暮らしやすさと、夫婦2人になったときの暮らしやすさは両立できます。
フレキシブルに使える空間をつくる
子ども部屋は「子どもが巣立ったらどう使うか」まで考えて設計すると良いでしょう。
例えば、将来は趣味の部屋や客間に転用できるような柔軟な空間にしておく。
壁を可動式にしたり、収納を工夫してフリースペースとして使いやすくすることもおすすめです。
動線はシンプルにしておく
夫婦2人になると生活動線も変化します。
階段を頻繁に使わなければならない間取りや、行き止まりの多い動線は、年齢を重ねるほど負担になります。
1階に生活の中心を置ける間取りにしておくと、将来的にも安心して暮らせます。
コンパクトな暮らし方にも対応できる間取り
広々とした家が良い、というのは子育て中には当たり前の考え方。
でも夫婦2人になった後は、なるべくコンパクトに暮らせるような設計が理想的です。
普段は1階だけで生活が完結し、来客時や子どもが帰省したときだけ2階を活用するような住まい方も考えておくとよいでしょう。
これにより、掃除や光熱費の負担も軽くなります。
メンテナンス性・掃除のしやすさを意識する
夫婦2人の暮らしにおいては、掃除や手入れのしやすさが暮らしの快適さを左右します。
手の届きにくい場所を減らしたり、メンテナンス性に優れた素材を選んだりといった工夫も設計段階から意識しておきたいポイントです。
設計時に考えておきたいライフプランとの連動
家づくりをするときは、「今の生活」を中心に考えがちです。
けれど、設計の段階で将来のライフプランも家族でしっかり話し合っておくことがとても重要です。
子どもが巣立ったらどう暮らしたいか、夫婦2人の時間をどう過ごしたいか、親の介護や老後の暮らしまで見据えておくと、家の設計にその考えを反映させることができます。
まとめ:人生の変化に寄り添う家づくりを
家族の形は変わっていくものです。
だからこそ、今の暮らしにぴったりなだけの家ではなく、将来の暮らし方にもフィットする家づくりを意識することがとても大切です。
- 子ども部屋はフレキシブルに使える設計にする
- 夫婦2人の動線がシンプルになるように考える
- コンパクトな暮らしにも対応できる間取りを意識する
- 掃除や管理が楽になる工夫を取り入れる
- 家族でライフプランを共有して、設計に活かす
家づくりは未来の暮らしの準備でもあります。
変化する暮らしの中でも、ずっと心地よく住める家を一緒につくっていきましょう。