「家づくりは対話」──設計者とともに育てる、あなたらしい住まいのつくり方

こんにちは。有村建築設計工房の有村です。
僕は鹿児島県姶良市を拠点に、木造住宅やマンションリノベーションを手がけている建築家です。

これまで多くのご家族と家づくりを共にしてきましたが、実感していることがあります。
それは、「家づくりとは、対話である」ということです。

この記事では、設計事務所ならではの“対話を重ねる家づくり”について、僕自身の経験を交えてお話ししていきます。

■ 間取りや性能の前に、「言葉にできない想い」がある

家を建てたい。そう思ったとき、最初から明確に「間取りはこれ、設備はこれ」と決まっている方は多くありません。

多くの場合、

  • 「広すぎなくていいけど、閉じこもる感じにはしたくない」
  • 「家族の気配が感じられる間取りがいい」
  • 「朝、気持ちよく起きられるような寝室にしたい」
    といった、ぼんやりとした感覚的な要望から始まります。

僕が大事にしているのは、こうした「言葉になりきらない想い」を丁寧に引き出していくことです。
そのために不可欠なのが、設計者とお客様の対話です。

■ 設計は“聴くこと”から始まる

設計の打ち合わせでは、住まいに関することだけでなく、日々の暮らしや考え方、生き方そのものまで話題に上がることがあります。

たとえば、
「夜は音楽を聴きながら過ごすのが好き」
「休日は庭で植物をいじっていたい」
「人を招くのが好きだけど、ひとりの時間も大事にしたい」

こうした会話の中に、住まいのヒントが詰まっています。
設計図面は、この“会話の蓄積”によって育っていくものなんです。

■ 対話を重ねることで、唯一無二の家が生まれる

家づくりは時間がかかるプロセスです。
ヒアリング、プラン提案、修正、詳細設計…。長ければ1年近くかかることもあります。

その中で何度も打ち合わせを重ね、想いをすり合わせ、時には方向転換もしながら進めていきます。
このプロセスを大切にすることで、「建て主の想い」と「設計者の視点」が交わり、そのご家族にしかない、唯一無二の住まいが形になっていきます。

■ ハウスメーカーとの違いは“設計の自由度”と“対話の深さ”

よく聞かれる質問のひとつに、「設計事務所とハウスメーカーは何が違うのか?」というものがあります。

ひとことで言えば、

  • 設計の自由度が高い
  • お客様との対話の密度が濃い
    という2点が大きな違いです。

ハウスメーカーでは、あらかじめ決められたプランから選ぶことが多く、設計に使える時間も限られています。
一方で設計事務所では、お客様の暮らし方や価値観に合わせてゼロからつくり上げることができます。

それは同時に、「一緒につくっていく」という姿勢が求められるということでもあります。

■ 家を“建てる”のではなく、“育てる”

僕は家づくりを「育てる」ものだと考えています。
完成がゴールではなく、住まい手の暮らしとともに育っていく家が、理想的な家です。

最初は気づかなかった場所が、暮らしの中で居心地のいい場所になったり。
季節の変化を通じて、光や風の心地よさを再発見したり。

対話を通じて生まれた住まいには、こうした「伸びしろ」があります。

■ 鹿児島という土地で、暮らしと向き合う設計を

鹿児島には、火山灰や強い日差し、湿度の高さなど独特の気候風土があります。
この土地で快適に暮らすには、地域に根ざした知識と工夫が必要です。

たとえば、

  • 火山灰を考慮した庇の設計
  • 南国らしい日差しに対しては深い軒や格子の利用
  • 湿気対策としての風の通り道の確保

こうした**“土地と対話する設計”**も、僕たち建築家の仕事です。
住まい手との対話に加えて、土地との対話を重ねることで、本当に心地よい家ができあがるのだと感じています。

【まとめ】

  • 家づくりは“対話”から始まり、“対話”で深まる
  • 設計者は、言葉にならない想いを引き出し、形にする役割
  • ハウスメーカーとは違い、自由度と対話の密度が高い
  • 住まいは完成してからも暮らしとともに“育っていく”
  • 鹿児島の土地と暮らしに寄り添った設計が、豊かな家をつくる

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