建築基準法で「吹抜けに火打ちが必要」は大嘘!?適切な火打ちの使い方とは?

吹抜けに火打ちを入れたくない…それって無理なの?

「吹抜けには火打ちが必要だと聞いたけれど、本当に入れないといけないの?」

そんな疑問を持たれる方が増えています。

たしかに、火打ち材は建物の構造にとって重要なパーツのひとつですが、誤解や不安から「吹抜けはやめた方がいいかも…」と諦めてしまう人も少なくありません。

今回は、建築基準法・住宅性能評価・フラット35など、いくつかの制度やルールを踏まえながら、火打ちの正しい知識と設計の工夫についてわかりやすくご紹介します。

火打ちって何?建築基準法に書かれていること

火打ち(火打ち梁・火打ち材)は、木造住宅の床や屋根の角に斜めに入れる部材です。
主に、地震や風などの横からの力に対して、建物がねじれたりゆがんだりするのを防ぐために使われます。

建築基準法で定められた義務

建築基準法施行令 第46条には、

「床組、小屋組には火打材その他これに類する部材を設けること」

と明記されています。
つまり、火打ちは建築基準法上「設けなければならない」とされている部材です。

ただし、法律上は「設けること」と書かれているものの、

  • どの範囲に
  • どれだけの面積を

といった具体的な配置基準や数値は明記されていません。

そのため、確認申請の際も「火打ちが入っているかどうか」は見られても、「どこにどのように入っているか」までは深く指摘されないケースが多いのです。

指摘される・されないは審査機関によって異なる

ただし注意しておきたいのは、どの程度まで指摘されるかは、審査機関や建築主事によってばらつきがあるということ。

同じ設計内容でも、ある自治体では火打ちの位置や面積を細かく確認され、別の自治体ではノータッチということも珍しくありません。

特に「構造計算が不要な住宅」では、火打ちについての審査が比較的緩やかになる傾向がありますが、それでも必要な構造補強が省略されてよいという意味ではありません。

見えない部分ほど、設計者の知識と責任が問われる部分です。

しかし構造の確認の苦手な設計士は、構造的責任を取ることを恐れて確認することなく安全な無難な方に誘導します。

これが、『吹抜けに火打ちが必要と法律でなっている』という誤解に繋がります。

「吹抜けに火打ちが必要と法律でなっている」は誤解

「吹抜けには、火打ちが必要」と思っている設計士もいるかもしれません。

けれど、これは間違いです。

建築基準法内の定義では、あくまでも「床組、小屋組には火打材その他これに類する部材を設けること」補強材として、建物全体の“水平構面”を強くすることにあります。
建物が水平方向から力を受けたときに、変形しないようにするために必要なのです。

水平構面とは?

たとえば、家を箱にたとえると、底面(床)や上面(屋根)が一枚の板のようにしっかりしていないと、押されたときにクシャっとゆがんでしまいます。

この“板のような構造”が「水平構面」です。
火打ちは、その面の四隅に入れることで、「一枚の板」としての強さを保たせる働きをしています。

つまり、吹抜けによって床がなくなると、その部分の水平構面が弱くなる。
だからこそ、火打ちなどの補強材が求められることになるのです。

耐震等級やフラット35でも火打ちが必要になる

建築基準法とは違い、住宅性能評価やフラット35などでは、火打ちに関する要件がより明確です。

耐震等級で求められる水平構面の性能

耐震等級2や3を取得するには、「床面の剛性」などが厳しくチェックされます。

吹抜けで「床面の剛性」などが足りなくなると、別の方法で補強する必要が出てきます。そのひとつが、火打ちの設置です。

フラット35の技術基準

フラット35の申請でも、耐震性に関する基準があり、こちらも火打ちの配置が関係します。
申請図面に火打ちが描かれていなかったことで、審査機関から指摘が入ることもあるため注意が必要です。

見た目を損なわずに火打ちを設ける工夫

火打ちを設けること自体は避けられないとしても、「せっかくの吹抜けが台無しになるのは避けたい」という声も多くあります。

そこで、見た目を損なわずに火打ちを入れるための工夫をご紹介します。

  • 火打ちが吹抜けに入らなくてもいい設計をする
  • 梁を太くし、構造的に火打ちを不要にする設計にする
  • 火打ちの代わりに、構造金物や壁面で補強する

これらの工夫は、建築士との打ち合わせの中で初期段階から設計に取り入れることが重要です。

まとめ|火打ちの設置は義務。ただし見せ方は工夫できる

最後に、火打ちについての要点を整理しておきます。

  • 火打ちは建築基準法で設置が義務づけられている
  • 配置や面積については、設計者の判断に委ねられている部分が大きい
  • 審査機関や建築主事によって、指摘の有無や内容には違いがある
  • 吹抜けがあると水平構面が弱くなり、火打ちがないと構造的弱点になることが多い
  • 耐震等級やフラット35では、火打ちの設置が審査のポイントになる
  • 設計の工夫で、見た目と安全性を両立することができる

ただし、気を付けなければならないのは、構造的工夫を必ず取り入れること。
これをしないで、ただ吹抜けから火打ちを無くすとただ、家に構造的弱点を作ってしまうことになります。

「吹抜けを入れたいけど、火打ちがネックで…」と迷われている方は、ぜひ一度、設計事務所に相談してみてください。

有村建築設計工房では、構造と意匠を両立させた住宅設計を通して、安心で美しい住まいづくりをご提案しています。

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