
土地探しをしていると、陽当たりや立地、価格など、目に見える条件に目が行きがちです。
しかし、安心して長く暮らせる家づくりのためには、地盤の状態がとても重要なポイントになります。
いくら理想の家を建てても、地盤が弱ければ家は傾いたり、大きな修復費用がかかったりと、大きな後悔につながることも。
特に鹿児島県内はシラス台地・埋め立て地・斜面地など地盤特性が地域ごとに大きく異なるエリア。
注文住宅を建てる場合は、必ず地盤調査をしっかり行い、その結果をもとに正しい判断をすることがとても大切です。
今回は、地盤調査の基本から、結果による対応方法、失敗例まで詳しくご紹介していきます。
これから土地探しや家づくりを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
地盤調査とは何をするのか?
まずは地盤調査とは何なのかを簡単に説明します。
注文住宅を建てる際、土地が決まった段階や設計がまとまりかけた段階で、その土地が建物を安全に支えられるかどうかを確認する調査を行います。
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)
戸建て住宅ではスウェーデン式サウンディング試験が最もよく使われています。
細いロッドを地面に押し込んで、地盤の硬さや支持層の深さを確認します。
この結果をもとに、建物に必要な強度があるかどうか、改良が必要かどうかが判断されます。
表面波探査法
もう一つよく使われるのが表面波探査法。
地面に振動を与えてその波の伝わり方から地盤の性質を判断します。
掘削しないため、狭い土地や既存住宅がある場合にも使いやすい方法です。
調査で何がわかる?
- 支持層の深さ(建物を支える硬い層までの距離)
- 地耐力(その土地がどのくらいの重さに耐えられるか)
- 地盤改良の必要性(補強工事が必要かどうか)
この情報が、家の基礎の設計や建築コストに直結する非常に重要な要素になります。
地盤改良が出た場合の対応と費用感
地盤調査の結果、もし「このままでは家を建てるのは危険」という診断が出た場合、地盤改良工事が必要になります。
鹿児島でも特に埋め立て地・沿岸部・造成地・シラス層が厚いエリアでは、地盤改良が必要になるケースは少なくありません。
地盤改良の主な工法
- 表層改良工法:浅い地盤改良で済む場合。数十万円~百数十万円程度。
- 柱状改良工法:コンクリートの柱を地中に施工する方法。100〜300万円程度。
- 鋼管杭工法:さらに支持層が深い場合。300万円以上になることもある。
改良工法は土地の状況によって異なるため、必ず専門家と相談して進めましょう。
地盤改良の費用は土地選びの時点では見えにくい部分。
「土地が安かったはずが、改良費で結局高くついた」という後悔はよくあります。
必ず地盤調査の結果を受けて、家づくり全体の予算に反映させることが大切です。
地盤が良好だった場合のメリット
逆に、地盤が良好だった場合は以下のようなメリットがあります。
- 改良費がかからない分、家づくりのコストを抑えられる
- ベタ基礎など標準的な基礎設計で対応でき、施工もスムーズ
- 将来的な不同沈下などのリスクが低い
鹿児島でもシラス台地の安定したエリアや台地上の良好な土地では、改良不要で進められるケースもあります。
良好な地盤は家の性能を活かすための土台として、とても大きな安心感につながります。
地盤調査の結果を軽視した場合に起こりうるリスク
地盤調査は「やればOK」ではなく、結果を正しく理解し、それに応じた設計と工事を行うことが重要です。
もし軽視してしまうと、次のような深刻なトラブルにつながります。
家の不同沈下(傾き)
最も深刻なのが不同沈下です。
家の一部が沈み、建物全体が傾いてしまう状態になります。
ドアや窓が開かない、床が傾く、壁に大きな亀裂が入るなど、生活そのものに支障が出てしまう場合も。
一度不同沈下が発生すると、修復には数百万円〜場合によっては1000万円以上の費用がかかることもあります。
構造全体の大規模な補修や、最悪建て直しになるケースも。
保険が適用されないリスク
地盤調査の結果を反映せずに施工していた場合、多くの住宅瑕疵保険では不同沈下などの被害は免責扱いになることがあります。
つまり、自費で全額修復しなければならないという事態もありえます。
「最初からきちんと調査し、必要な対策を行っていれば防げたのに」という後悔が残らないようにすることが大切です。
家の資産価値が大きく下がる
不同沈下が起きた家は資産価値が大きく下がってしまいます。
将来的に売却したい場合でも、買い手がつきにくくなったり、大きな値引きを求められることがあります。
せっかくの注文住宅の価値を守るためにも、地盤調査の結果はしっかりと活かす姿勢が大切です。
地盤リスクを最小限にするための対策
予算に地盤改良費を計上しておく
まずは土地購入時点から地盤改良費を予算に含めておくことが大切です。
地盤改良が出ても対応できる資金計画を立てておけば、計画が大きく狂うリスクを減らせます。
土地の履歴や周辺の情報を調べる
土地選びの段階で、地名や古地図、近隣の地盤改良状況を調べることも有効です。
鹿児島では埋め立て地や古くは田だった場所などはリスクが高めの傾向があります。
地盤調査は信頼できる専門家に依頼する
地盤調査の質も重要です。
価格だけで選ばず、信頼できる地盤調査会社や専門家に依頼し、結果を正しく読み解いてもらいましょう。
設計段階から地盤に配慮する
設計の段階から、基礎の設計や建物配置を地盤状況に合わせて計画することも重要です。
有村建築設計工房のような設計事務所に相談しながら、安心できる家づくりの設計を進めていきましょう。
まとめ:安心な注文住宅づくりは、まず安心な地盤から
地盤は家づくりの最初の一歩としてもっとも大切な要素です。
地盤がしっかりしていなければ、どれだけ高性能な家を建てても安心して暮らすことはできません。
鹿児島の土地はエリアによって地盤特性が大きく異なります。
土地を選ぶときは、地盤調査を前提にしっかりと計画を立て、家づくり全体のコストと安全性を見極めることが後悔しないコツです。
僕たち有村建築設計工房は設計事務所として、土地選びや地盤調査結果を踏まえた安全な設計を大切にしています。
安心して長く暮らせる家をつくるために、見えないところほどしっかりと確認する姿勢を持って、家づくりを進めていきましょう。