子育てと老後に強い家:ずっと安心して暮らせる住まいの考え方

こんにちは。有村建築設計工房の有村です。

家を建てるタイミングとして多いのが、「子どもが生まれたから」「家族が増えたから」というライフイベントです。
ですが、僕たちが本当に考えてほしいのは、その家で何十年と暮らしていく未来の姿です。

今回は、「子育て」と「老後」――このふたつの時間軸をしっかりと支える、家づくりの考え方と設計の工夫についてお話しします。

子育てにやさしい家とは?家族が自然と集まる工夫

1. 家事動線の短さが、子育ての余裕を生む

子育て世代にとって、日々の家事は「こなすだけで精一杯」という方が多いと思います。
そんな忙しい日常を少しでもラクにするには、無駄のない家事動線が欠かせません。

例えば、

  • 洗濯機から物干し場、収納までを一直線でつなぐ
  • キッチンから子どもの様子が見えるようにする
  • 玄関からリビング、水回りまでの動線を分けてスムーズに

こういった配慮だけで、日々の小さなストレスが減っていきます。
そしてそのぶん、子どもと向き合う時間が増えたり、自分の気持ちに余裕が生まれたりするのです。

2. 成長にあわせて変えられる空間

子どもはあっという間に成長します。
3歳のときに必要だった空間と、10歳、15歳で求める空間はまったく違います。

だからこそ、成長に合わせて使い方を変えられる空間設計が大切です。

  • 幼少期はプレイスペースとして、後に勉強スペースや個室へ
  • 子ども部屋は最初は間仕切りなし、将来的に仕切れる構造
  • 収納は「今のモノ」だけでなく「これから増えるモノ」に備える

可変性のある空間は、住まいに“ゆとり”を与えてくれます。
それは同時に、家族関係にもゆとりを生むことにつながると僕は思っています。

3. 「家族の居場所」が分散されすぎないこと

個室やプライベート空間を確保することも大切ですが、子どもが安心して成長するためには、家族が自然に集まる空間が家の中心にあることが理想です。

  • ダイニングやリビングの延長としてスタディスペースを設ける
  • 会話が生まれるキッチンレイアウトにする
  • 玄関や廊下に“すれ違う場面”を設計する

「気づいたら同じ空間にいた」「何気ない会話が生まれた」
そんな日常の積み重ねが、家族の絆を育てる土台になります。

老後にやさしい家とは?将来の安心も設計に入れておく

1. バリアフリーだけが正解じゃない

老後を考えると、「バリアフリー設計が必要ですか?」という質問をよくいただきます。
たしかに段差をなくす・手すりをつけるといった工夫は重要ですが、それだけでは本当に暮らしやすい家とは言えません。

大切なのは、“ラクに動けて疲れにくい”家をつくること。
たとえば、

  • トイレや浴室などの水回りを近くにまとめる
  • 段差のないだけでなく、幅に余裕のある廊下や引き戸にする
  • 生活の中心がワンフロアで完結するようにする

そうした設計は、若いうちは「快適さ」として機能し、年齢を重ねるほどに「安心感」として活きてきます。

2. 変化に対応できる“構造の余白”

老後にどう暮らしたいか、正直、今はまだわからないという方も多いと思います。
だからこそ、変化を受け入れられる家のつくり方が必要になります。

  • 将来ベッドが必要になったときに寝室になる予備室
  • 介護が必要になったときに水回りに近い居室を確保しておく
  • ご夫婦それぞれが“ひとりになれる空間”を設ける

今すぐに使うわけではなくても、「使えるようにしておく」ことで、選択肢のある暮らしが生まれます。

3. 光と風、そして“心地よさ”をつくる設計

年齢を重ねるほど、家で過ごす時間が長くなります。
そのときに、光の入り方や風の通り方といった要素が、毎日の気持ちを左右するほど大きな役割を果たします。

  • 窓の位置や大きさで日中も明るい空間にする
  • 風が抜ける開口部の設計で空気を動かす
  • 断熱性・気密性を高めて体への負担を減らす

これらはすべて、「健康的に過ごせる家」をつくるために欠かせない要素です。
特に鹿児島のように夏が厳しく、冬も寒暖差がある地域では、パッシブ設計の視点がとても大切になってきます。

「子育て」と「老後」、同時に考えるからこそ生まれる工夫

子育てと老後は、まったく違う時間軸のように思えますが、設計の視点では重なる部分も多いんです。

  • バリアフリーな空間は、子どもの安全にもつながる
  • 将来仕切れる部屋は、今はプレイスペースとして使える
  • 動線の短さや収納の工夫は、どの世代にもありがたいもの

目先の便利さや見た目にとらわれず、「変化に強い家」をつくっておくことが、どの世代にとっても心地よく長く暮らせる家につながります。

まとめ|人生の“両端”に優しい家を

家は、人生のなかで一番長く付き合う場所です。
子どもが生まれてから育ち、独立し、そしてまた夫婦二人での時間が戻ってくる。
そのすべての時間を、同じ住まいで快適に過ごせることほど、贅沢なことはないと思います。

  • 子育てにおいては、家事動線や成長への対応力を
  • 老後においては、動きやすさと心の安らぎを
  • 共通するのは「柔軟で、変化に強い家」であること

僕たち有村建築設計工房では、ライフステージのどこかに特化するのではなく、
暮らしの時間すべてを包み込む家を目指して、設計しています。

「今は子育て。でも将来も見据えたい」
「親と同居するかもしれない。先に備えておきたい」
そんな想いをお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
一緒に、変化を味方にできる家づくりを考えていきましょう。

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