
こんにちは、有村建築設計工房の有村です。
家づくりをする中で、よく相談を受けるのが「窓の配置や種類ってどう選べばいいんですか?」というご質問です。
窓は、ただの開口部ではありません。
光の入り方、風の通り道、見える景色、そしてプライバシーの確保まで。
暮らしの質を大きく左右する、とても重要な“設計の要素”です。
今回は、僕が実際の家づくりで大切にしている「後悔しない窓の選び方」について、
鹿児島の気候風土も踏まえながらお話ししたいと思います。
■ 窓選びで後悔する人の共通点
まず最初に、ありがちな後悔ポイントをいくつかご紹介します。
- 「西日が強くて夏がとにかく暑い」
- 「隣の家と視線がかち合って落ち着かない」
- 「明るさはあるけど、なんだか居心地が悪い」
- 「大きな窓を付けたけど、外が丸見えでカーテン閉めっぱなし」
このような悩みを抱える方の多くは、「間取り」や「デザイン」ばかりに気を取られて、
“窓の位置や役割を深く考えないまま家づくりを進めてしまった”という共通点があります。
■ ポイント①「光の入り方」から逆算する
窓を決めるうえで、最初に考えたいのが「光」です。
光は方角によって質が変わります。
- 東の光:爽やかで朝の目覚めに最適
- 南の光:一日を通して安定した明るさ
- 西の光:午後の強い日差しで、夏場は室温が上がりやすい
- 北の光:やわらかく安定していて、絵画や読書に向いている
よくある失敗は「大きな窓=明るい=正解」と思い込むことです。
大きな南向きの窓でも、軒が深すぎれば冬に光が入らなかったり、
西側の掃き出し窓で、夕方の西日が強烈に差し込んでしまったり。
光の「質」と「量」、そして「時間帯」を意識して配置することが大切です。
■ ポイント②「風の通り道」を意識する
次に考えたいのが、風の通り道です。
鹿児島では夏の蒸し暑さが厳しい日もありますよね。
そんなときに、風が抜ける家は本当に快適です。
風を通すには、ただ窓を開けるだけでは不十分。
**対角線上に窓を設けたり、上下の空気の流れを利用した「重力換気」**を意識する必要があります。
たとえば、リビングに南北で窓を配置すれば、風が自然と抜けていきます。
また、階段の上に高窓を設けることで、暖かい空気が上昇して抜けやすくなります。
エアコンに頼らない「パッシブな暮らし」を実現するためにも、
風の設計は、窓選びとセットで考えるべきポイントです。
■ ポイント③「何を見せるか・何を隠すか」
これは設計事務所ならではの視点かもしれません。
窓は「外を見せる道具」ではなく、「暮らしを整えるための道具」です。
つまり、ただ外の景色を取り込むだけでなく、
- 隣家の視線を避ける
- 見せたい景色だけを切り取る
- 内と外の距離感をつくる
といった「暮らしの質」を整えるツールとして考えます。
たとえば、坪庭に面した横長の窓。
外からは見えず、室内からだけ植栽が望める、そんな窓があるだけで、
室内に“自然”が取り込まれ、気持ちがぐっと落ち着く空間になります。
逆に、全面道路に面した大きな窓は、開放感はあるけれど、落ち着かない空間になりがちです。
外からの視線を遮る工夫をしなければ、「使わない窓」になってしまいます。
■ ポイント④「掃除・メンテナンス」も忘れずに
機能性だけでなく、日々の暮らしにおいて“扱いやすいかどうかも大切です。
- 高すぎる窓は掃除がしづらい
- 掃き出し窓の前に大きな家具があれば使いにくい
- 雨戸・シャッターが開閉しにくい位置にあると面倒
こうした点も、図面の段階で十分に検討しておくことで、「つけたけど使わない窓」になるのを防げます。
■ ポイント⑤ 鹿児島という地域性を活かす
僕たちの住む鹿児島は、南国特有の高温多湿、台風、火山灰といった自然条件があります。
この地域で暮らしやすい窓を考えるには、土地の特性に合った設計が不可欠です。
たとえば、
- 火山灰が舞いやすい方角には、開閉しやすく掃除しやすい窓を
- 台風に備えて、開口部はコンパクトかつ堅牢な設計を
- 夏の強い日差しに対しては、庇やルーバーで遮光する工夫を
こうした細やかな配慮を積み重ねていくことで、「鹿児島で気持ちよく暮らせる家」が実現します。
■ 僕たちが提案する“窓から考える家づくり”
有村建築設計工房では、「間取り」や「広さ」よりも前に、
その家でどう光が入り、どう風が抜け、どんな景色が見えるかという視点から設計をスタートします。
窓はただのパーツではなく、暮らしと自然をつなぐインターフェースだと考えているからです。
「こういう景色を眺めながらコーヒーを飲みたい」
「リビングは午後のやわらかい光でくつろぎたい」
そんな日常の“感覚”を一緒に掘り下げながら、設計に反映させていきます。
■ まとめ:窓は「感性」で選ぶのが正解
後悔しない窓選びに必要なのは、数値だけでは測れない「感性」です。
- 明るさや風通しだけでなく、「どんな暮らしをしたいか」から考える
- 窓の位置・高さ・開き方で、暮らしの質が大きく変わる
- 鹿児島という土地に合った“風土対応型の設計”が重要
- 住まい手の感覚や価値観に寄り添った提案が、満足度の高い家づくりにつながる
窓は、家の“雰囲気”そのものをつくります。
ぜひ、住まいの中で「どこに、どんな窓をつけるか」を大切に考えてみてください。
もし迷ったら、僕たちのような設計事務所に相談してもらえれば、
“言葉にならない希望”を形にするお手伝いができると思います。