
こんにちは。有村建築設計工房の有村です。
家を建てるとき、「土地探し」や「敷地選び」はとても重要です。
でも僕はそれ以上に、「土地を読むこと」=敷地の声を聞くことを大切にしています。
この記事では、設計者として日々心がけている「敷地の読み方」についてお話ししたいと思います。
■ 「この土地、なんとなくいいな」と感じる理由
土地を見に行ったとき、「なんとなく気持ちいいな」「ここに住んだら落ち着きそう」と感じたことはありませんか?
その直感、実はとても大切です。
たとえば、
- 光の入り方が気持ちいい
- 風が通り抜けている
- 近隣との距離感にゆとりがある
- 周囲の自然が見えて心が休まる
これらは、**敷地が発している“声”**のようなもの。
そして、こうした感覚は、机上の図面や地図だけでは絶対にわかりません。
だから僕は、設計の前に必ず敷地に立ち、耳を澄ます時間をとるようにしています。
■ 敷地が設計に与える、たくさんのヒント
一見、ただの更地に見える場所でも、じつはその土地にはたくさんの情報が詰まっています。
たとえば、
- どの方向から風が抜けるか
- どの時間帯にどこから光が差し込むか
- 近隣の建物の配置や高さ
- 周囲の視線の方向と抜け感
- 雨水の流れや地盤の状態
- 鳥や虫の声、木々の揺れ方
これらを細かく観察していくと、**「この場所には、どんな暮らしが似合うか」**が自然と見えてきます。
設計者として大切なのは、こうした敷地からのヒントを、間取りや窓の配置、動線計画に丁寧に落とし込んでいくことです。
■ 鹿児島という土地ならではの注意点
鹿児島には、他県にはない特有の土地環境があります。
例えば、
- 桜島の降灰を考慮した庇や窓の設計
- 強い西日と湿気に配慮した断熱と通風計画
- 土地の高低差が大きいエリアでの基礎や外構の工夫
- 山や海に近い場所での潮風・地盤への対応
これらはすべて、土地をよく“読む”ことで見えてくる課題です。
僕たち設計者は、鹿児島の土地と向き合いながら、その土地で快適に暮らすための答えを設計で導き出します。
■ 敷地に“逆らわない”設計が、暮らしやすさを生む
時に、「この土地に3階建てを建てたい」「道路側をすべて閉じてプライバシーを確保したい」など、強いご要望をいただくことがあります。
もちろん、その気持ちも理解できます。
でも、敷地の特性に逆らって無理な設計をすると、
- 光が入らず暗い部屋になってしまう
- 通風が悪く湿気がこもる
- 道路との関係が不自然で使い勝手が悪い
といった“暮らしにくさ”が生まれます。
大切なのは、敷地に逆らわず、活かすこと。
その土地に合った暮らし方、建て方を一緒に考えることが、結果的に住み心地のよさに繋がっていきます。
■ 敷地との対話から始める家づくり
家づくりを「暮らしを設計すること」だとすれば、
その舞台である敷地は“住まいの背景”そのものです。
- どういう方角に開くと心地よいか
- どこに木を植えると風景になるか
- どこに窓を開ければ、朝日が差し込むか
こうしたことを一つひとつ考える過程は、まるで敷地と会話をしているような感覚になります。
この時間を大切にすることで、間取りやデザインだけでは語れない“豊かさ”をもった住まいができあがるのです。
【まとめ】
- 敷地には、暮らしのヒントがたくさん詰まっている
- 図面ではわからない「光・風・視線・音」などを体感する
- 鹿児島の気候風土を考慮した設計が必要不可欠
- 敷地に逆らわない設計が、暮らしやすさを生む
- 設計は、まず“土地の声を聞く”ことから始まる
これから土地を探す方も、すでに敷地が決まっている方も、
「この土地は、どんな住まいと相性がいいのか?」という視点を持つことで、家づくりの可能性はぐっと広がります。
有村建築設計工房では、敷地探しの段階からご相談を承っています。
「この土地で、どんな家が建てられる?」といったご相談も大歓迎です。
お気軽にお問い合わせください。