
こんにちは。有村建築設計工房の有村です。
家づくりを考えるとき、ほとんどの人が「今の暮らしや家族構成」に合わせて間取りや設備を決めていきます。
もちろんそれは大切なことですが、果たしてその家は10年後も、変わらず快適に暮らせる家になっているでしょうか?
今回は、10年後・20年後も後悔しない家をつくるために、将来を見据えた設計の考え方についてお話しします。
暮らしは必ず変わっていく
10年という時間は、家族の暮らしにとって小さな変化ではありません。
たとえば…
- 子どもが成長して個室を必要とするようになる
- 夫婦どちらかが在宅ワークを始める
- 家族の誰かに介護が必要になる
- 趣味やライフスタイルが変化する
- ペットを飼い始める
こうした変化は予想できないものもありますが、起こる可能性が高い変化に備えた設計は可能です。
「今ちょうどいい間取り」は10年後に窮屈になる?
家づくりの打ち合わせで、「今の暮らしにピッタリ合う家」を目指す方は多いです。
ですが、それが10年後には使いにくくなってしまうケースも少なくありません。
たとえば、今は3人家族でも、将来4人・5人になる可能性があれば、最初から柔軟に対応できる間取りにしておくことが大切です。
- 最初はリビングの一角として使えるスペースを、将来的に個室として仕切れるようにする
- 子どもが独立した後に、趣味部屋や客間として活用できる空間にしておく
- 洗面室や玄関収納などの“可変性のある空間”を確保しておく
こういった配慮は、後々のリフォーム費用の削減にもつながります。
変化に対応できる「ゆるやかなゾーニング」の考え方
空間を完全に区切るのではなく、“緩やかに分ける”ことを前提とした設計は、10年後の暮らしにも強い味方になります。
たとえば、
- 可動式の収納家具や引き戸を使って部屋を仕切る
- ロフトやスキップフロアなど高さでゾーンを分ける
- 将来的に壁を追加しやすい構造にしておく
これらは、今は広く使え、必要になれば区切って使えるというメリットを生みます。
固定した壁や用途でガチガチに決めてしまうと、生活の変化に対応しにくくなりますが、空間に余白を持たせておくことで、暮らし方の選択肢は広がります。
将来のメンテナンスを見越した素材・構造の選び方
設計だけでなく、素材選びや構造も10年後を見据えた工夫が必要です。
- 床材は傷がつきにくく、張り替えやすい素材を選ぶ
- 外壁や屋根は耐候性の高いものを選定する
- 設備(キッチン・お風呂など)は部分交換がしやすいものを選ぶ
また、メンテナンスのしやすさは、家を長く大切にできるかどうかに直結します。
10年後に大掛かりな修繕が必要な家と、定期的な手入れで保てる家では、住まいへの愛着も変わってきます。
家族の“将来の時間”を設計に取り込む
設計というと、「図面」や「素材」の話に思われがちですが、僕たちが本当に大事にしているのは、“暮らしの時間”を設計に反映することです。
今、子どもが遊びまわるリビングが、数年後には静かな読書スペースになったり、
客間だった和室が、親との同居のための寝室に変わることもあります。
暮らしは止まっていません。
だからこそ、家も「使い方を育てていける余地」があることが大切だと思っています。
実例紹介:10年先を見据えた家
あるご家族は、「最初は夫婦二人だけど、将来的に両親との同居も視野に入れておきたい」というご要望でした。
そこで、リビング横にある洋室を“将来的な寝室”として設計し、今はワークスペースとして使用。
引き戸を閉めれば独立性のある個室として使える設計です。
また、水回りは将来手すりの取り付けや動線変更にも対応できるよう、余裕のある寸法と構造補強を事前に盛り込みました。
こうした設計は、建てた瞬間だけでなく、10年・20年と、暮らしのステージが変わるごとに「この家にして良かった」と感じてもらえる工夫です。
まとめ|「10年後の快適さ」を設計に仕込む
家づくりにおいて、目の前の暮らしを快適にすることはもちろん大事です。
でも、それだけでは不十分。時間とともに変化する暮らしを支えられる家こそ、本当に価値のある家だと僕は考えます。
- 暮らしは必ず変わる。その変化に“構造的に対応できる家”にする
- 間取りに柔軟性を持たせることで、将来のリフォームコストを抑える
- 素材や構造も、10年後のメンテナンスを見越して選ぶ
- 家族の「将来の時間」を設計に組み込む
「完成した家」ではなく、「育てられる家」を目指した設計。
それが、有村建築設計工房が大切にしている家づくりです。
将来の安心まで含めて、住まいづくりを一緒に考えていきませんか?