
昨今の家づくりと言うと断熱工事とても重要な部分を占めており、家を作ってもらう会社の指標にされている人もとても多いと思います。
断熱材の性能で家の保温性、エネルギー消費量、健康が大きく左右され最近では断熱と高性能設備を組み合わせて少なくても60万円以上の補助金を取得できる機会も増えて、国としても新しく建つ家の高断熱化、高性能化の後押しをしてくれています。
そんな断熱ですが、性能の指標となる外皮平均熱貫流率(UA値)の数字だけが独り歩きしてしまい、断熱で一番肝心の施工です。
施工とは断熱材を実際に壁の中に取り付ける工事をすることを言うのですが、自社で使っている断熱材の特性を知らずただ使っているだけの会社が非常に多く、正しい施工方法を知らない為、間違っていたとしても気づくことが出来てない場合が多いです。
断熱設計をメインとしている設計事務所の方が写真を見ていると半数以上の会社が断熱施工ミスをしていると言います。
僕が聞いて衝撃だったのは高断熱を売りにしていたハウスメーカーですら間違っている現場があるという事です。
それだけ現場で作業する職人、現場の管理をする監督、建物を設計した設計者の知識が頼りかが分かります。
特に最近はやりの吹付ウレタンフォームと言う断熱で防湿層を設けてない場合は注意が必要です。
防湿層とは室内で発生する水蒸気によって発生する結露を防止するために必要な材料です。
専門的に言うと難しいですが要は家の中の水蒸気が断熱材の中に入っちゃうと結露して断熱材の性能が下がったり、カビの原因になるから入らないようにしようという事です。
この防湿層は定常結露計算というもので壁内に結露が出来ないかリスクを計算して結露が起きずらい壁の作り方なら防湿層を作らなくてもよくなります。
しかし、この定常結露計算は少し複雑で難易度もそこそこあります。
それにともなって、建物を作っている会社で計算をしているところはほとんどありません。
多くの場合、「鹿児島県は定常結露計算をしたらウレタンフォームなら防湿層いらないらしいよ」と言う噂話程度で施工されているのです。
定常結露計算は壁に使われている材料の湿気の伝導率などによっても大きく左右されます。
一度壁内で結露が起きてしまうとそのことに気づくことはできませんし、結露が原因でカビが発生した場合も分かりません。
よくて壁の表面にカビが浮き出てきて発覚出来たらいい方で最悪の場合、周辺の柱や梁、土台といった構造の木材を腐らせて耐震性に大きな影響をもたらす可能性だってあるのです。
どんなに強く作っても材料が腐ってしまえば耐震等級なんてものも役には立たなくなります。
今は良く使われる発泡ウレタンフォームで例を上げましたが、それ以外の断熱材を使っても全く同じことが言えます。
必ず防湿層が必要となるグラスウールやロックウールと言われる材料はその防湿層の作り方を主に間違われたり、そもそも断熱材自体の取り付け方が間違っている事が非常に多いですし、押出法ポリスチレンフォームという発泡スチロールのような板状の断熱材も取り付け方を間違えてしまっているケースは非常に多いです。
これらのミスを防ぐためには、施工する側がしっかりと断熱材に対して理解している事を前提に、会社として断熱検査をおこなって間違いがないかを施行者、設計者、管理者として三者でチェックすることが重要です。
断熱施工のミスがあるとどんなに外皮平均熱貫流率の数値が良くても意味がありません。
外皮平均熱貫流率はきちんとしてた断熱施工をしている事を前提に作られているからです。
家を作るとどうしても中の物より、見た目の色やデザインに意識が行きがちになってしまいます。
聞くことで現場は詳しい人かもしれないと気が引き締まり、いつもより注意を払って仕事をしてくれます。
目に見えない部分だからこそ、より興味を持っていただききちんと施工されているかを見届けてもらいたいと思います。