家の断熱性能はどこまで上げたらいいのか?

高断熱・高気密を日本の建物が求めだして10数年が経ちました。
昔は断熱材なんてヒラヒラのグラスウールが一枚申し訳ない程度に入っていただけですが、最近では壁いっぱいに断熱材を詰めて外の外気温を遮断して、室内の温度を逃がさないようしっかりと断熱されてきました。

多くの建設会社の建物は外皮平均熱貫流率が0.6を下回るようになり0.5代の建物も当たり前になってきました。

そんな昨今さらに上のグレードの断熱を目指すべくパッシブハウスという概念が生まれ、高断熱から超高断熱と言う段階に足を踏み入れ始めているのです。

そうなってくるとやはり気になるのがどこまで断熱にこだわるべきなのかと言う事です。

現状よりいいものがあればそれを手に入れたいなと思うのは人間の性と言うべきでしょうか。。。やはり超高断熱と聞くと「とてもいいものではないんじゃなかろうか!?」と感じがちです。
しかし、ある一定のラインを越えたらそこから先は万人にとっていい世界ではないと僕は感じています。

僕が思う一定のラインとはZEH住宅の基準です。
ZEH住宅を簡単に説明すると日本の断熱基準より性能のいい断熱にして、省エネ設備を使って家で使うエネルギー消費量を20%削減して、太陽光を載せて晴れた日は太陽光でエネルギーを賄おうという住宅です。

この日本の断熱性能よりいい断熱は平均外皮熱貫流率のUA値0.6以下にする事です。
UA値はその建物の断熱に対する指標で数字が小さくなるほど性能が高くなります。

鹿児島県や周辺県の多くはUA値0.6以下がZEH住宅にする為の最初のラインとなります。
ちなみに、鹿児島県の通常の断熱基準はUA値0.87です。

数字を見ただけで日本の建築ルールだけで建物を建てていたら性能が悪いかよく分かる数字です。
20年くらい前の建てられて家はUA値1.0なんて家もザラにあります。

とにもかくにも僕が断熱として人が苦も無く生活できる最低のラインはUA値0.6だという事です。

UA値0.6以下であればリビングのエアコンを1台14畳くらいのサイズを使っていればLDKくらいは十分に効かせることもできますし、生活のコストとしてUA値0.6より悪い環境に住んでいた人は光熱費が目に見えてよくなっている事が体感できるかと思います。

しかし、ここまでは僕が思っているあくまで最低基準です。
有村建築設計工房が目指している断熱性能はUA値0.46いわゆるHEAT G2グレードと呼ばれる断熱性能になります。
この断熱性能にすることで何が変わるかと言うと、設計次第では14畳タイプのエアコン1台で家全体の空調を賄う事ができます。
また、室内全体の温度も均一になりやすくなるのでエアコン効果も相まってリビングと洗面室や寝室とトイレなど人が生活する空間と瞬間的に使う空間の温度差が小さくなります。

※一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅協会出典

G2グレードは鹿児島県(7地域)においては暖房機の室内の温度が13℃以下にならない程度の性能です。
ここまで来たら温度の事を気にせずに生活していけるかと思います。
しかし、断熱性能をここまで上げる事は今の日本では想定されていないのでこの性能帯あたりは建築コストにそのまま返ってくるのがデメリットになります。

ここから更に上に行くとHEAT G3グレードと言うものがありUA値0.26と言う数字になります。
ここまでくるとエアコン一台で家全体の空調管理が可能となります。
換気などで断熱性能を損なわないようにしっかりと計算をされた換気システムを使う事で部屋の温度を一定に保ち、何時にどの場所にいても同じ環境で過ごすことができるほど超高断熱になります。
コスト的なところはG2と同じで良くした分だけ建築コストに返ってきます。

ここまで聞くとコストさえ合えばG3がいいのではと思う人も多いですが、僕が思う最大のデメリットは部屋の住環境をシステムで管理しているという事です。

G3グレードを求めている方の多くは「家の中にどこにいても快適に過ごすことができる。」この一点につきるでしょう。
そもそも断熱性能を上げるという事は、家の住環境を良くしたいという目的なので当たり前と言えば当たり前です。

しかし、日本人のある習慣がG3グレードの家には圧倒的に合いません。
その習慣とは、「窓を開けての換気」です。

先ほども説明した通り、G3の一番の恩恵はその断熱性能の高さから実現できるシステムで管理された一定の室温で生活できる住環境です。
しかし、この中には窓を開けての換気は含まれていません。
むしろ、窓を開けての換気はしないように言われているケースも多々あります。

今の住宅は建築基準法で24時間常に換気することが義務付けられていて、窓を開けての換気をする必要はほぼありません。
それなのに、多くの方は朝や日中など定期的に窓を開けて換気する習慣が根強く残っています。
それはやはり、実際の気温を肌で感じ四季を感じてきた結果だと思います。
なので、窓を開けて換気をしないと気持ち悪いと感じる人には合わないかもしれません。

あとは室内でペットを飼われる方も注意が必要です。
イヌやネコは知っての通り人間よりはるかに鋭いセンサーを持っています。
そのセンサーの中に気温を感じ取るという行動があるようです。
冬場に寒い外に出たがったり、窓辺でずっと外を眺めているのもそのセンサーで木をんを感じ時期や季節を感じとっていると言われています。

そんな中、一定の環境下の中に置かれてしまうとセンサーがおかしくなってしまいトイレの失敗や体調不良などペットの生活に支障が出る事もあるそうです。

どうでしょうか?
必ずしも断熱性能が良いからといって万人に良いものと言う事はいえないのではないかと僕は考えています。
その中で万人に合う断熱の上限がUA値0.46、G2グレードなんじゃないかと言うのが僕の鹿児島県という環境の断熱材の考えになります。

とは言え、高断熱にしていけばその分コストにも返ってきます。
予算と相談をしながらより良い住宅性能の選択のお役になればと思います。

有村建築設計工房では耐震性能、断熱性能などの相談も受けています。
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